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城を噛ませた男 / 伊東潤

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★★<5段階評価>


作品紹介(Amazonより)------------
「全方向土下座外交」で生き延びた弱小勢力もついに運の尽きが。起死回生はあるのか(見えすぎた物見)。
落城必至。強大な水軍に狙われた城に籠もる鯨取りの親方が仕掛けた血煙巻き上がる大反撃とは(鯨のくる城)。
まずは奴に城を取らせる。そして俺は国を取る。奇謀の士が仕組んだ驚愕の策とは(城を噛ませた男)。
のるか、そるか。
極限状態で「それぞれの戦い」に挑む人間の姿を熱く描いた渾身作。
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戦国時代のあまり有名ではない人物を主人公にした短編集。
武力的には弱い者たちが、戦略・謀略だけで強い者達に相対する話。

面白いのは面白かったんだけど、短編集なのが残念だった。
短い中に話を収めるためか解説のような部分が多いと感じてしまい、物語に入り込むことができなかった。
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# by wakabadana | 2016-06-27 14:35 | 伊藤潤

嫌われる勇気 / 幸せになる勇気 / 岸見一郎・古賀史健

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★★★★★<5段階評価>

フロイト、ユングと並ぶ三大心理学者の一人、アルフレッド・アドラーの考え方を解説してくれている本。
“哲人”と“青年”の対話形式なっているのでとてもわかりやすい。

『嫌われる勇気』では、自分に自信がない劣等感の塊のような青年が哲人の書斎を訪れるところから始まる。
悩める青年に対して哲人は、アドラーの思想をとくとくと話して聞かせる。
アドラーの考え方に反発し反論していた青年だったが、最後には自信を取り戻し晴れやかに書斎を出て行く。

『幸せになる勇気』では、その3年後に青年がまた書斎を訪れるところから始まる。
最初の対話のあとに青年は、アドラー思想を信念とした教師になる。
だが、アドラーの考え方を実践しているにも関わらず生徒たちは荒れ、学級崩壊を起こすほどになっていた。
アドラー思想に失望し憤慨した青年は、その怒りを哲人にぶつけるために書斎を訪れたのだった。


NHK Eテレ『100分de名著』の今年2月分がこのアドラーの回で、この本の著者である岸見さんが解説してくれていた。
私は、アドラーという心理学者をこの番組で初めて知ったのだけれど、私がこの40数年間生きてきて経験や感覚で身につけた考え方・思想・渡世術が、アドラー思想にとても似ているものだったので、共感と納得のしまくりで鳥肌が立った。
その番組のあとに気になってこの2冊を読んでみたのだけど、やはり共感と納得しかなかった。

“全ての問題はシンプルである”とアドラーは言うけど、私も心からその通りだと思う。
悩んでいる人自身が問題をこねくり回してややこしくしているだけで、冷静に考えれば問題の核はシンプルだし、その核が見極められれば対策方法は絞られてくる。

とても論理的で合理的で単純明快な思考経路なので、この考え方で生きることができればものすごく楽だし、現に私は、対人関係で悩んだり揉めたりということが、“主観的に見て”ほとんどない。
この“主観的に見て”というのが大事なわけだけど。

理解するのも実践するのも難しいと言われているらしいアドラー心理学だけど、自分の心の有り様や考え方の方向性をほんの少し変えることができれば、抱えている問題や苦しさは劇的に変化すると思う。

学校や職場や家庭でトラブルを抱えて苦しい人にはぜひ読んでほしい本です。
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# by wakabadana | 2016-06-23 11:07 | 岸見一郎

夜また夜の深い夜 / 桐野夏生

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★★★<5段階評価>

イタリアのスラム街に母親と二人で暮らすマイコは、幼いときからいろいろな国を転々とする生活をしてきた。
超秘密主義の母親から他人との交流を禁じられているので友達は一人もいない。
その母親は、時々マイコを残して長期でどこかへ出かけ、毎回、整形手術で別人のような顔になって帰ってくる。
マイコは成長するにつれ、母親には重大な秘密があるのではないかと疑うようになる。


友達のいないマイコが、勝手に親近感を覚えた七海という人物に手紙をしたためるという、独白形式で物語は進んでいく。
マイコの体験、マイコの心情、マイコの感想のみで構成されているので、マイコの知らないこと、知り得ないことは描かれない。
物語の中で何か事件が起きたとき、主人公の視点と事件の当事者の視点の両方から書かれることが多いので、主人公が知り得ないことでも読者は知ってたりするものだけど、この作品はマイコ以外の視点での描写は一切ない。
だから、少しずつ母親やマイコの出生の秘密などが明らかになりながらも、わからないことはわからないままスパッと唐突に終わる。
マイコが選んだ道が正しいのか正しくないのか、そんなことにも一切言及しない。

マイコの過酷で危うげな生き方にハラハラしながら、物語に引き込まれた。
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# by wakabadana | 2016-06-11 22:49 | 桐野夏生

また、同じ夢を見ていた / 住野よる

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★★★<5段階評価>

小学生の“私”には学校で仲の良い友達はいない。
だけど学校が終わったら、尻尾の短い小悪魔な“彼女”と一緒に“アバズレさん”や“おばあちゃん”の家に遊びに行く。
その時間はとても楽しくて、学校に友達なんかいなくてもいいという気持ちになる。
ある日、学校の授業で「幸せとはなにか?」を話し合うことになり、“私”は“アバズレさん”と“おばあちゃん”にも「幸せとはなにか?」と聞いてみる。
小学生の“私”にはまだちょっと難しいけど、“アバズレさん”と“おばあちゃん”は「幸せ」についての大事なヒントを教えてくれる。


こまっしゃくれた主人公の女の子が生意気なんだけど憎めなくて、、ギューって抱きしめたくなる。

人生とは選択の連続。
いくつもの分岐点で進む道を選択してきて今の自分がある。
あのときあっちの道に行っていたら?

そんなことがテーマになっている作品。
ライトな文体だから好き嫌いはあると思うけど、私はとても読みやすくて物語に入り込めた。

ただ、前作の『君の膵臓をたべたい』の方が好き。
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# by wakabadana | 2016-06-05 01:10 | 住野よる

夏の沈黙 / ルネ・ナイト(訳:古賀弥生)

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★★★<5段階評価>

作品紹介(Amazonより)--------
テレビのドキュメンタリー制作者のキャサリン。
彼女は順風満帆の生活を送っていた。
手がけた番組が賞を獲得、夫は優しく、出来がいいとはいえない息子も就職して独立している。
だが、引っ越し先で手にした見覚えのない本を開いた瞬間、彼女の人生は暗転した。
主人公は自分自身だ。
しかもその本は、20年間隠してきた秘密を暴こうとしている!
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キャサリン側の視点と、謎の本を書いたスティーヴン側の視点、交互に物語が進む。
読み進めるうちにキャサリンの秘密が少しずつつまびらかになるが、最後には読者の予想に反する秘密が明かされる。
この、少しずつ少しずつという感じが焦れったくて先が気になって仕方ない。
グイグイ読者を引っ張っていく、読ませる作品。

グイグイ引っ張ってきたわりに、クライマックスの展開が意外にあっさりだったのがちょっと肩すかしだったけど、それでも十分面白い。
あと、読後に冷静になったら登場人物の心境を理解しにくいところもあったけど(なぜあの人はそういう行動をとったのかとか、なぜこの人は簡単に納得したのかとか)、そういう人物の機微は深く考えずにサスペンスの展開を楽しめばいいと思う。

とても映像向きな作品。
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# by wakabadana | 2016-05-27 21:25 | ルネ・ナイト